初診時は、娘さんが車椅子を押しながら、来院されました。73歳の女性です。
とても、疲れていらして年齢以上に老けて見えました。娘さんに話を聞くと2年前にご主人に先立たれて気落ちしていたようです。
女性の場合は、連れ合いが亡くなると元気になり、どんどん活動的になる人が多いようですが、きっと仲の良い御夫婦だったのでしょう。
娘さんは,当医院の患者さんであったことから、定期健診時にお母様の入れ歯の話をされました。家では,ほとんど寝てばかりで一人では外出もしません。このまま寝たきりになってしまうのではないか、とても心配していました。
それで、院長が気分転換に入れ歯を新しく作ることを薦めました。
初めは、息子さんが車を運転し娘さんが付き添うことで、なんとかクリニックまで、たどり着くような状態でした。
早速、診療台に座って頂き診察を行ないました。
今まで、使用していた入れ歯は噛み合わせが低く、顎提の大きさに比べて極端に小さく、上の入れ歯は噛みしめていないと落ちてくる状態でした。下の入れ歯は、ただ乗っかっているというより、¥口の中で踊りを踊っているようでした。作られてから3年ぐらいだそうでした。
ますは、噛み合わせを段階的に高くして、必要最小限の大きさまで入れ歯の大きさを回復しました。
前歯は女性らしく、小さくて丸みのある人工の歯を並べました。
よく話には「新しく入れ歯を作ることで元気になった」と聞きますが、娘さんに抱き抱えるようにして、一人では歩くこともできなかった、患者さんが一人で電車に乗って通院できるようになったのです。
「諦めていた、おしんこや煎餅も食べられた」と言って大変よろこばれました。
「亡くなった主人の分もよく食べて、長生きしないとね」と言った言葉が心に残りました。
お母様の元気になった姿は、娘さんや息子さんにとっても、どんなに 嬉しいことでしょう。
娘さんから「こんな親孝行ができると思いませんでした。有難うございました。」と感謝の言葉を頂きました。
2015-01-02