A.総入れ歯の製作には、情報収集が必要です。
例えば、総入れ歯になると前歯の位置を決めるための、前後的な位置、左右的な位置、上下的な位置という三次元的な位置がほとんど失われています。
この状態でよいと思われる前歯の位置や入れ歯の形を探り出していかなければなりません。
完成義歯を一発で作ることは難しく失敗する確率が高くなります。
そこで、治療用義歯を使用することで、診療室だけでは得られない情報を集めて行きます。
患者さんとの会話だったり、歯が残っていた頃の写真を参考に、治療用入れ歯を製作し、実際に食事をしたり、会話をしたり、家族の話を聞いて、治療用義歯を調整していきます。
治療用入れ歯が患者さんの口の中で、安定していくことによって、安心していろいろなものが食べられるようになります。発音もしやすくなり、口元も自然になり、笑うこともできるようになります。
口の周りの筋肉がトレーニングされて行くからです。
治療用入れ歯を使うことによって、入れ歯の力を受け止める粘膜も、少しずつ鍛えられて、入れ歯に加わる力に耐えられるようになっていきます。
こうして筋肉が鍛えられ、粘膜が整えられ、さらに入れ歯が安定していくのです。
患者さんが治療用入れ歯を十分に自然に使いこなすことできるようになって、初めて最終的な完成義歯の製作に取り掛かれるのです。
治療用入れ歯を実際に使用しないとわからないことばかりです。
答えは患者さんのもわからないし、その答えは日々変化して行くのです。
快適な入れ歯作りは、治療用入れ歯で十分に調整をなされた上で製作される完成義歯なのです。
2016-02-04