A. 使われなくなった入れ歯をゴミと一緒に捨てるのは気が引けるという患者さんがいます
特に感染症の恐れがなければ不燃ごみと一緒に捨てても構いません。
NPO法人日本入れ歯リサイクル協会では、使わなくなった入れ歯に使われている金属を回収しリサイクルして、ユニセフおよび福祉事業団体への寄付をおこなっています。
「思い入れの深い入れ歯だから」処分するのに迷われている方には、入れ歯の供養をしてくれる所もあります。
愛知県名古屋市中区の大須観音の境内に全国でも珍しい「歯歯塚」があります。
1977年8月8日に建立され、以降8月8日を「歯歯塚」の日として毎年供養をしています。
故人が愛用し遺品としての入れ歯を処分する場合は、火葬場によっては、入れ歯は断られていまいます。納骨の際に入れ歯を後から入れたりするようです。
また、火葬可能な葬儀用入れ歯を代わりに棺に入れる紙でできた「スマイル・デンチャー」という入れ歯もあるそうです。
あさひクリニックでは使われなくなった入れ歯は、スタッフ皆で労をねぎらってから、医療廃棄物として専門の業者に処分をお願いしております。
古い入れ歯やあわなかった入れ歯は、航空機事故で回収されるブラックボックスのように多くのデータを私たちに提供してくれます。
患者さんが長年、愛用した入れ歯だけではなく、本入れ歯を作る前処置として作った治療用入れ歯もそうです。
治療用入れ歯は、患者さんの悩みに歯科医と技工士が真摯に向かいあった歴史が刻み込まれているのです。
あさひクリニックの技工室にも、どうしても、捨てられない入れ歯がたくさんあります。
患者さんの要望に答えて、極限まで削り込んで軽くした入れ歯や「自然であること」、「絶対に入れ歯とわからないこと」が第一条件とした入れ歯などです。
名古屋市の「歯歯塚」の石碑には、こう記されているそうです。
はは塚の記
歯よ、入れ歯よ、よく働いてくれた。
どうしてお前を捨てられよう。
その安住の地が即ちこの「はは塚」である。
これからはもう物を噛む必要はない。
のんびりとこの塚でおしゃべりして休養してもらいたい。
その意味で建立されたのがこの塚である。
歯よ、入れ歯よ、
長い間ご苦労さんでした。
2015-06-10