上手な入れ歯のお手入れ

健康な生活を送るには 総入れ歯、部分入れ歯のお手入れが大事です

食事時にご使用になるお皿や、お茶碗は、1日3回毎食後、丁寧に洗います。
それとまったく同じです。

毎食後、総入れ歯、部分入れ歯を洗い、清潔にしておきましょう。

✩入れ歯・義歯のお手入れのメリット

① 清潔
② 口臭防止
③ 快適な装着感
④ 入れ歯が長持ち
⑤ 要介護者や高齢者の誤嚥性肺炎など感染予防

健康な方でも、私たちのお口の中には、約200種類以上の細菌が住んでいます。

自分の歯が残っている場合はもちろん、
総入れ歯を使っている人でもお手入れをしないと
お口の中の細菌を増やし、除菌をしていない入れ歯を使い続けることにより、誤嚥性肺炎の原因になることが報告されております。

また、入れ歯につくプラークはデンチャープラークといって、天然歯に付着するプラークに比べて、真菌、特にカンジダ菌が占める割合が多いのです。
これが口臭や残っている健康な歯の虫歯、歯周病、さらには口内炎などの原因となります。

ですから、入れ歯のお手入れは、食後の食器洗いと同じに考え、丁寧に行ってください。

そして清潔な入れ歯で毎日食事することが健康長寿の上でとても大切なことです。

✩上手な入れ歯・義歯のお手入れの原則

Ⅰ 専門の衛生士による定期的清掃
Ⅱ 毎日行なう入れ歯のお手入れ

毎食後、総入れ歯、部分入れ歯を洗い、清潔にしておくことが、基本です。

入れ歯を長持ちさせるには、毎日のご自分での入れ歯のお手入れが大切になります。

さらに、毎日のご自分でのお手入れでは、十分に落としきれない入れ歯の隠れた沈着物や歯石を専門の衛生士によるプロのお手入れで丁寧に除去してもらいましょう。

Ⅰ専門の衛生士による定期的清掃

市販されている入れ歯洗浄剤は、「酵素入り」が多く、毎日付着する雑菌を除菌します。

一方、頑固な色素沈着や、歯石は、ご自分で毎日お手入れをしていても、気が付くと、また付着しており、それが、雑菌の繁殖する好発部位になってしまいます。
毎食後、ご自分で清潔にすること!
それに加え、長く快適に入れ歯をご使用いただくために定期検診が大切です。
専門の衛生士による入れ歯の清掃を受けることにより、総入れ歯、部分入れ歯を長持ちさせることが可能になります。

✩当院の専門衛生士による定期的清掃法✩

① 流水を使用します。
3~5分かけて義歯用ブラシの平らな軟らかい毛で、広く滑沢な面を丁寧に磨きます。

② 流水を使用します。
3~5分かけて義歯用ブラシの先の細くなっている硬い毛で、クラスプなどの金属部分や床の凹んだ内面や人工歯の間を優しく清掃します。
裏側の凹んだ面をすみずみまで丁寧に磨きます。

歯科医院取り扱い品の義歯洗浄剤を使用し、頑固な汚れをしっかり取り除きます。

歯科医院の大型の超音波洗浄器で、隠れた汚れを落とします。
入れ歯は、部分入れ歯・総入れ歯を問わず、食事の際に必ず汚れます。
古い入れ歯は、傷のついた部分、プラスチックとバネとの境目には微細な隙間があります。
この隙間に隠れた食べかすが入りこんだ状態で入れ歯を使っていると、やがて入れ歯が臭くなったり、全体的にヌルヌルしてきます。
超音波洗浄器の使用目的は、ブラシでは落としきれなかった入れ歯の隠れた汚れを超音波の力を借りて落とすことです。

さらに、入れ歯に付着したしつこい蛋白性皮膜、ヤニ、茶シブなどの場合、次亜塩素酸ナトリウム3%配合、の歯科医院/技工所専用の義歯洗浄剤を使用し、強力に漂白、殺菌、溶解、脱臭します。
その結果、入れ歯はピッカピカになります。
※防錆剤配合なので、金属床も安心です。

また、入れ歯に付着した頑固な歯石の場合、プロ専用の洗浄剤で、短時間で溶解、洗浄し、歯石を取りのぞきます。

以上の清掃作業をプロの衛生士が定期的に行うことにより

① 清潔
② 口臭防止
③ 快適な装着感
④ 入れ歯が長持ち
⑤ 要介護者や高齢者の誤嚥性肺炎など感染予防

のメリットが期待できます。

Ⅱ毎日行なう入れ歯のお手入れ

また、入れ歯を長持ちさせるにはブラッシングと毎日の入れ歯のセルフケアが大切です。ポイントをマスターして総入れ歯、部分入れ歯を長持ちさせましょう。

✩毎日行なう入れ歯のお手入れ法✩

入れ歯のお手入れは、毎食後、総入れ歯、部分入れ歯を洗い、清潔にしておくことが、基本です。
お手入れをきちんと行っている人の入れ歯は、時間がたってもいつもきれいです。

一方、お手入れがきちんと出来ていない方の入れ歯は、1ヶ月前に作製したばかりの新品の入れ歯でも表面には食べかすと一緒になって、色素が沈着し、ヌルヌルしたぬめり感があります。

具体的には

① 必ず、入れ歯を口からはずして、水道の水を少しずつ流しながら、

義歯用ブラシで入れ歯全体を優しく丁寧にブラシで磨いて、入れ歯についた汚れを落として下さい。但し、力を入れてゴシゴシ磨く必要はありません。

② 入れ歯洗浄剤を使用して残った汚れを溶解させます。
※入れ歯洗浄剤だけでは効果が少ないです。①のブラッシングと併用しましょう。
※なお、高齢者の入れ歯洗浄剤による事故が報告されています。入れ歯洗浄剤を薬と間違えて飲んだり、飲料として飲んでしまったりというケースがあります。認知症や介護が必要な方は家族の方の注意が必要です。

③ 超音波洗浄器を利用して、ブラシで取れなかった細かい汚れを落とします。

また、入れ歯を長持ちさせるためには、入れ歯だけでなく他の歯も丁寧に磨きましょう

例えば
部分入れ歯の場合、残っている自分の歯と入れ歯、それぞれのお手入れが必要になります。
自分の歯については、クラスプ(維持装置)がついている歯や入れ歯の床が接している部分の歯が特にプラークがつきやすいのでていねいにみがきましょう。

✩総入れ歯、部分入れ歯を長持ちさせる方法✩

① 入れ歯は、原則としてお湯ではなく普通の水で洗ってください。水の温度が60度以上になると、入れ歯が変形する恐れがあります。入れ歯は熱に弱いので熱湯をかけたりしないことも大事です。

② 入れ歯を磨くときに歯磨き剤をつけて磨く方がおられますが、歯磨き剤には研磨剤が含まれていますので、入れ歯を傷つける原因になりますのでおやめください。

③ 入れ歯は、乾燥に弱いので外しているときは入れ歯ケースなどに清潔な水を入れて保管するようにしてください。

➃ 漂白、殺菌作用に優れている次亜塩素酸系の入れ歯洗浄剤をご使用になる場合、入れ歯の種類によっては劣化の恐れがあります。
また、部分入れ歯には金属が使われていることが多いのですが、金属の種類によっては洗浄剤で変色が起こることがあります。
使用している入れ歯の素材によって、どのタイプの洗浄剤がよいかも異なるので、かかりつけの歯科医院にご相談してください。

こんな方にお薦め

総入れ歯、部分入れ歯を使用しているすべての方

例えば
・入れ歯が汚れている方
・古い入れ歯をお使いの方
・茶シブが付着している入れ歯の方
・喫煙者の入れ歯
・介護の方
・誤嚥性肺炎を引き起こす可能性のある方
・ズルズルしたぬめりが付着している入れ歯の方
・金属床の黒ずみのある方
・入れ歯を長持ちさせたい方
・義歯性口内炎や歯肉炎になりやすい
・入れ歯安定剤を常に持ち歩いている方

質問1
入れ歯が匂います。困っています

Anser
入れ歯は、部分入れ歯・総入れ歯を問わず、食事の際に必ず汚れます。
そして、入れ歯は、つねに唾液や食事の水分にさらされています。
一方、入れ歯の金属以外の部分は、唾液や水を吸いやすく、吸収した唾液などの水分が臭いの原因の1つです。
特に表面に傷のついている古い入れ歯、調整で裏打ち材を使った入れ歯は臭いがつきやすいので注意しましょう。入れ歯の清掃を毎日きちんとすることが大事です。

質問2
入れ歯の洗浄剤は何がいいですか?

Anser

当院では、市販されている入れ歯洗浄剤をほぼ全て購入し、体験してみましたが、大きな違いは、あまりないようです。
大事なことは、毎日、入れ歯を清潔にすることですので、値段や、嗜好(例えば、ミントの香り…など)を考慮し、毎日続けられるようにしてください。
なお、使用している入れ歯の素材によってどのタイプの洗浄剤がよいかも異なるので、かかりつけの歯科医院にご相談してください。

質問3
入れ歯の歯ブラシは何がいいですか?

Anser

操作性、グリップ感、毛の質、長さ、密度、ファッション性などを比較しようとし、6種類の入れ歯の歯ブラシを衛生士4名に使用してもらい、最も使いやすいものを1本選んでもらいました。
結果は、4名それぞれ違うものを選びました。

6種類の入れ歯の歯ブラシは、大きな違いはなく、どの入れ歯の歯ブラシも、高齢者を意識した扱いやすいデザインで、柄が持ちやすいので、手が少し不自由になっても使いやすいようにできています。

また、ブラシはどれも2種類ついており、入れ歯の特徴である広い平らな面は、大きい植毛のほうで、また、くぼみや金具などの細かい部分の清掃には、小さい植毛の方で磨くことを薦めています

入れ歯歯ブラシの種類よりも、研磨材の入った歯磨き剤を使用しないことや、入れ歯の破折の原因となる過度の力を加えてブラッシングしないことが重要でしょう。