「ゆとり」のある入れ歯作りとは、「経済的なゆとり」のある自由診療の入れ歯作りのことを指すのでしょうか?
豊かさを「ゆとり」と言い換えられるかもしれません。
例えば、メガネを高級ブランドのメガネフレームで新調しても、視力が衰えてしまえば、レンズを取り替えなければ、いずれ見えにくくなるでしょう。
入れ歯も同じことです。高額の入れ歯を作れば終わりということではありません。
完成した時は、ぴったりした入れ歯でも、定期的に調整して顎堤の退縮に対応していかなければあわない入れ歯になります。
場合によっては、作り換えないと入れ歯の役目を果たさなくなります。
「ゆとり」のある入れ歯作りとは、自動車のハンドルのように、「あそび」が必要です。
もしも「あそび」がまったくないハンドルを作ったら、ちょっと動かすだけで、「ぱっと」車が動いてしまうので、とても危険です。
ある程度の「あそび」で、人間の手の動きと車の性能がうまく擦りあわさっているのです。
入れ歯と歯ぐきは、日常生活に困らない程度、話をしたり笑って外れない「ゆとり」のある状態に保たれています。
普段から入れ歯が歯ぐきを押し続けていれば、息苦しくて入れ歯を外したくなるでしょう。
入れ歯の「チューニングサイクル」を音楽のワルツの3拍子に例えられることがあります。
食物が口の中に入ると、噛み合わせる力で、入れ歯が歯ぐきに押し付けられて密着します。
次に入れ歯の歯が食物を捉えて押し潰して行きます。
この段階では、まだ押し潰すだけで、食物は切り刻まれてはいません。
そこでもう一度噛み締めることで肉や野菜の繊維を切り刻むことができます。
ですから、ワルツの3拍子なのです。
この「あそび」とか「にげ」は、あらゆる分野では昔から経験的に知られています。
人間工学に基づいた機械やシステムは人間を縛らないで、ストレスを与えないで楽しく使いこなせることで最近”ヒューマンフレンドリー”という言葉がよく使われます。
入れ歯にも「ゆとり」は欠かすことができません。
入れ歯も患者さんを縛らないで、ストレスを与えないで楽しく使いこなせる”ヒューマンフレンドリー”な入れ歯で有りたいです。
2015-07-15