５０代の男性の患者さんです。
左の下の奥歯が3本抜いて有りません。
前歯を含めた他の歯は残っているので、見た目にも、食事にも、話をするにも、別段、困っていませんでした。
歯科医から、「抜いたままにしておくなんてとんでもない。歯を抜いたまま放置しておくと、筋肉、舌などが変形したり萎縮したりします。何年も放置しておけば、周囲の歯の位置が動いて、噛み合わせが狂ってくる」といわれて、部分入れ歯を入れました。
下の奥歯の入れ歯で、初めは隣の歯にひっかけたバネが気になりましたが、奥歯なので目立つこともなく、慣れたら違和感のなく使えていたようです。
しかし、固い食べ物は食べにくいので、反対側の右の歯でばかり噛んでいました。
半年がたった頃、バネをかけてある歯が少しずつでしたがグラグラ動き出してきました。
しかし、その動きは微妙で痛みもほとんどありませんでした。
また、その頃は仕事が忙しくて歯科医に行く時間もなかったので、『気のせいだろう』とそのままにしていたそうです。
その後もバネをかけた歯のグラグラは一向に治まらず、ときどき腫れるようになってきました。
結局、再び歯科医を受診した1年後の診断ではバネをかけた歯が入れ歯を噛み合わせるたびにバネからの力が歯に加わり、歯を支えていた骨が炎症を起こし、溶けてなくなり、抜くしか方法は無くなってしまったそうです。
「こんなことになるなら、初めから入れ歯など入れなければよかった」と患者さんが悔やむ気持ちもわからなくはないのです。
この患者さんは、入れ歯を作る前に、歯槽骨や歯周病の診断をした上で、治療用の入れ歯を入れて時間をかけて、入れ歯のバネの強さやかけ方が間違っていなかったかを確かめる必要があったのでしょう。
この患者さんは、どちらかというと無精で、入れ歯の手入れも悪く、しかも仕事が忙しいことを理由に歯科医をせかして、短期間で入れ歯を作ったようです。
入れ歯が出来上がってからの調整もほとんどおこなわず、メンテナンスを怠ったことが症状を悪化させた原因かもしれません。
患者さんは、処置が手遅れにならないように、痛みや違和感を感じた時には、早目に歯科医に相談するなどの慎重さが必要です。
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2015-05-10
