A「技工士さんも歯を抜いて入れ歯にしたら」と患者さんに言われたことがあります。
歯科関係者も自分が歯科治療を体験して初めて患者さんの気持ちが分かったということがよくいわれます。
歯の手入れを心掛けている歯科医・衛生士・技工士などが、歯を失って入れ歯を入れることは少ないのではないでしょうか。
多くの歯科関係者は入れ歯の苦しみを知らないのです。
「入れ歯を作るなら、自分で入れ歯を使っている歯科医を探せ」とおっしゃる方もいます。
私も58歳になり、左下の第2大臼歯を抜きました。
歯を抜くことは根の先に膿が溜まって時々腫れていた歯だったこともあり、仕方がないと覚悟はできていました。
右下の第2大臼歯は40代に抜いたまま放置したままです。
そのため、上顎の第2大臼歯がかみ合う歯がなく、少し伸びて下がってきています。
私の口の中は、下顎両側の奥歯が一本ずつ無い状態です。
一番奥の歯なので、両隣の歯を削って三本繋ぎのブリッチをかぶせることはできません。
方法としては、インプラントを埋入するか、入れ歯を入れるか、そのまま放置するかです。
正直、奥歯なので審美性に困ることもありませんでしたが、
入れ歯を自分で作って、入れ歯体験をしてみることにしました。
入れ歯の第一印象は、私には入れ歯が便利で必要不可欠なものではなく、邪魔で違和感の大きいモノでした。
いつも舌が触って気になります。入れて話すと話しづらく、言葉につまりました。
食事をするのも入れ歯を入れない方が断然食べやすいのでした。
そんな入れ歯を自分なりに気が済むまで調整しました。
まず、入れておくだけなら一日中入れていても気にならない入れ歯になりました。
次に普通の食事をしても痛みが出ない入れ歯になりました。
この入れ歯体験をしたことは毎日の仕事でも大変役立っています。
患者さんが入れ歯の痛みや違和感を表現する「少し」や「ちょっと」の言葉のニュアンスを知ることができて、患者さんの気持ちへの理解が「少し」進歩したように思っています。
「ちょっと」したことで入れ歯は快適に生まれ変わるのです。
2016-02-22