入れ歯が外れる、痛い、口が開かない、顎が外れる、入れ歯を入れると疲れるなど、入れ歯の悩みを総動員したような患者さんでした。総入れ歯でご自分の歯は1本も無くなっていました。あちこちの歯科医院で入れ歯を作ってはダメ、作ってはダメの繰り返しだったそうです。あさひクリニックへは、「あう入れ歯、あわない入れ歯ここが違う」の本を読まれて来院されました。
まず、治療用入れ歯を作り調整を開始しました。とても真面目な患者さんで、２年の間に、入れ歯の調整に100回以上来院しました。毎週火曜日の午後4時が患者さんの指定席でした。普通に考えて2年で７３０日、約１０４週間、あさひクリニックの休みもありますから、100回という来院回数は、不可能に思えるかもしれませんが、患者さんは通い続けました。実は、１日に２回、午前に調整して、お昼食を食べてから、午後も一度調整をしたり、１週間に火曜日と金曜日の2回来院されたことがあるからです。
どうして入れ歯の治療にこんなにも回数がかかったかというと、患者さんの入れ歯の悩みが日によって違ってくることでした。その日に調整をして解決する事、時間をかけて解決する事、時間が経つとまた繰り返し問題になる事がありました。その一つ一つを患者さんと歯科医と技工士の三人四脚で根気強く入れ歯の調整を繰り返しました。
初診の相談の時から、入れ歯を強く希望されていました。インプラントの話も何度か出ましたが、「友達がインプラントをして顔がもの凄く腫れたので、したくない」ということでした。
そんなある日、入れ歯の調整の後に、
私「もう少しで、あさひクリニックに通われて１００回になりますね」
患者さん「ええ、２年になりますね。こんなに丁寧に調整してもらって、すいません」
私「顎堤が痩せてしまい、下顎の神経が入れ歯に当たっています。その痛みを避けて痛く無いところを探して食べるので、余計に痛みがあちこちに出やすいです」
患者さん「最初の相談の時に話があった インプラントをしないとダメですか？」
私「やっぱり、インプラントには抵抗がありますか？」
患者さん「ずっと、考えていたのです。なかなか決心できなくてね。１００回記念にインプラントしようかしら」
私「本当ですか！ まずは、ＣＴを撮ってインプラントの診断を受けてください」
患者さん「お願いします。」
私「しかし、今までの通院が、無駄になりませんか？」
患者さん「いや、決して無駄だったとは思いませんよ、１００回通って、決心できたのですから、
私のわがままを嫌な顔をせず、聞いてくれたじゃないですか」
ＣＴ検査後、上顎と下顎に合わせて１０本のインプラントを埋入し上部構造(インプラントの上に被せる人工の歯)を装着しました。かなり、高額な治療になりましたが、1年経った今では、何でも食べられるようになったと喜ばれて、
患者さん「技工士さん、もう治療費の元を取った気分ですよ、先生に言ってくださいね」
歯の治療はタイミングです。どうしても、歯や入れ歯の痛みをギリギリまで、我慢して後回しになります。特にインプラント治療は抵抗が多いようです。初めからインプラントの説明を受けても話の内容は、右の耳から左の耳へと抜けて行ってしまうのでしょう。
インプラント治療は従来の入れ歯と違い、結果が早く出る治療です。
この患者さんは、どんな入れ歯を入れても、どんなインプラントをしても、歯の悩みから抜け出すことはできなかったのかもしれません。たとえどんなに時間がかかっても患者さんと術者の信頼関係がなければ良い結果は生まれては来ないのです。
入れ歯（総入れ歯、部分入れ歯）専門の東京あさひクリニック・歯科
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2014-12-15
