入れ歯安定剤の使用法

入れ歯安定剤とは

歯ぐきと入れ歯の隙間を埋めて入れ歯を安定させる歯科補助用品です。
不安定でガタついた入れ歯により粘膜が傷ついたり、痛んだりすることを防ぐための歯科補助用品で、歯科医の管理下で応急処置用の歯科材料として、短期間の使用が望ましいと思われます。

入れ歯安定剤が要らない快適な入れ歯をお考えの方は
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禁忌・禁止
次のような人は入れ歯安定剤を使用しないでください。

(1)過敏症状{発疹・発赤・かゆみ・はれ等}の症状を起こしたことがある人
(2)入れ歯が直接触れるところに荒れ・痛み・傷・はれ等}の症状のある人
(3)食べ物などの飲みこみが困難な人{喉に詰まる気管に入る恐れがある}

入れ歯専門技工士の入れ歯安定剤使用感まとめ

入れ歯安定剤を愛用されている方が多い一方、歯科医の指導のない入れ歯安定剤の長期使用は、口腔内が不潔になりやすいばかりでなく、咬合変化や、健康な歯や、粘膜に負担がかかることが心配です。

今回、入れ歯の作製の向上のために実際にどのようなものが市販されているのかを調査、体験をしてみました。

体験方法
マウスピースを上アゴの総入れ歯に見立て、装着しました。
マウスピースの厚みは、通常の総入れ歯と同じ1.5㎜の厚さです。
マウスピースの大きさは、総入れ歯と同じ口蓋部を覆うタイプにしました。
装着時間は、食事を想定し、1時間としました。

入れ歯安定剤は市販されているクッションタイプ(1種類)とクリームタイプ(3種類)の4種類の安定剤を使用し、

① 操作性?
② 低刺激性?
③ 装着感?
④ 清掃性?
について体験してみました。

商品名:クッションコレクト
性状:クッションタイプ(弾力のあるペースト)

クッション効果で、痛みをやわらげる

適用入れ歯:総入れ歯 部分入れ歯(レジン床(プラスチック))

① 操作性 
専用の巻き上げ器がついているが、チューブから出しにくい、噛み合わせを損なわないよう均一に貼り付けるのが難しい。 
顎堤に不均一なストレスが加わり顎堤を痩せさせる可能性がある。
はみ出しや溶け出しが少なかった
② 低刺激性 
軟化剤としてのアルコールによる刺激がある。接着剤のにおいがする。
③ 装着感 ☆☆☆☆
吸着力と弾力性はクッションタイプが、一番優れていた。あまりの圧迫感で、気持ちが悪くなりなりそう…
④ 清掃性 
入れ歯の内面から指で引っ張って剥がしたが、かなり力が必要だ。乾燥すると、剥がれない。ぬるま湯につけて柔らかくするか、2倍に薄めたアルコールで拭き取らなければならない。

商品名:新ポリグリップ無添加 アース製薬
性状:クリームタイプ

ピタッとくっつき、ずれにくい

適用入れ歯:総入れ歯 金属床入れ歯 レジン床(プラスチック)

① 操作性 ☆☆☆
クリーム状でチューブから出しやすく、入れ歯の内面に少量塗布するだけで均等に広がり操作性がよかった。
② 低刺激性 ☆☆
低刺激である
③ 装着感 ☆☆
密着感は良好だが、安定剤が、口の中一杯に溶け出していくような感じがあるクリームタイプでは、仕方ないのだろう。         
④ 清掃性 ☆☆
入れ歯からは簡単にはがすことができた。
歯ぐきには、こびりついて残った安定剤は、うがいをしてもとれにくく、ティシュペーパーで拭ってやっと除去できた。

商品名:ポリグリップパウダー無添加 アース製薬
性状:クリームタイプ

義歯の安定感を高めるために

適用入れ歯:総入れ歯 レジン床(プラスチック)

① 操作性 ☆☆☆☆
パウダーなのでムラなく、入れ歯の内面に塗布することができたが、適量が解かりにくいだ液などの水分含むと粘着力を増す製品の性質上、徐々に口の中で溶け出し、ほとんど洗い流されてしまった。
② 低刺激性 ☆☆☆
低刺激性である
③ 装着感 
入れ歯のガタツキが大きかったり、唾液の少ない患者さんには向かないのではないか。
ある程度、入れ歯の適合していることが条件になる。
④ 清掃性 ☆☆☆☆
大変取れやすく水で流しながら軽い歯ブラシでとれた。塗布する量も影響するのだろうが、口の中には、残らなかった。

商品名:シーボンド エーザイ
性状:シートタイプ

ピッタリ合う、その上使いやすいシート型・総入れ歯安定剤

適用入れ歯:総入れ歯 金属床入れ歯 レジン床(プラスチック)

① 操作性 ☆☆
シートを濡らし入れ歯の内面に指でシワを延ばしながら張り付ける。入れ歯からはみ出た部分をハサミで切り取る作業が面倒くさい。
② 低刺激性 ☆☆☆☆
海藻の粘着成分のアルギン酸からできているため刺激はない。
③ 装着感 ☆☆☆
柔らかく歯ぐきへの負担が少ない
④ 清掃性 ☆☆
入れ歯からは簡単にはがすことができた。粘膜面付着した材料というか、ヌメリが残ってしまう。

患者さんは、入れ歯そのものの適合が悪いにも関わらず入れ歯安定剤の使用で良好な状態であると錯覚してしまい歯科への定期健診に通わなくことがあります。

適切な治療法によって入れ歯安定剤を必要としない良好な入れ歯を製作することができることを患者さんに理解していただき、快適な入れ歯を提供していくことが技工士の使命であり、望みでもあります。

今回、入れ歯の専門技工士として多くの入れ歯安定剤を実際に使ってみることができました。

体験時、総入れ歯に見立てたマウスピースと粘膜の間に煎餅のかけらが入りこみ、挟んで指で押さえただけで、粘膜に傷がつき出血したのです。

自分たち歯科技工士が、いかにデリケートな粘膜の上に入れ歯を製作しているかということを改めて実感することができ、さらに日々精進しなければと思った瞬間でした。

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上手な入れ歯安定剤の使用法1

☆応急的、短期的に活用することをおすすめいたします。
☆複数の入れ歯安定剤から自分の入れ歯に合ったものを選ぶことが大切です
☆入れ歯安定剤の適量を把握することが大事です

上手な入れ歯安定剤の使用法2

クッションタイプの場合
① 入れ歯専用歯ブラシで洗浄する

② 水分をふき取る

③ チューブから押し出す

④ 指で均一に延ばす

⑤ はめて2~3回噛みしめる

⑥ 一度はずして、はみ出した部分を指やハサミで切り取る

クリームタイプの場合
① 入れ歯専用歯ブラシで洗浄する

② 水分をふき取る

③ チューブから押し出す

④ 1cmの長さで三箇所に塗布する

⑤ 口の中で一分間ほど軽く押さえる

パウダータイプの場合
① 入れ歯専用歯ブラシで洗浄する

② 水でぬらした状態にする

③ パウダーをふりかける

④ 余分なパウダーを振り落す

⑤ 口の中で一分間ほど軽く押さえる

シートタイプの場合
① 入れ歯専用歯ブラシで洗浄する

② シートをさっと水に浸しのせる

③ はみ出した部分をハサミで切り取る

④ 指でシワにならないように延ばす

⑤ 口の中で一分間ほど軽く押さえる