A. 入れ歯によって、発音しにくい言葉があります。
口蓋を覆うとカ行の発音が難しくなります。
「樹木希林」「企業」が言えなくなったという患者さんがいました。
発音は、歯、口蓋、舌、口唇、下顎などの器官が中枢神経のコントロールを受け言語音を成立させています。
前歯を失うと息が漏れ、発音障害を起こしてしまいます。
入れ歯の装着で口腔の形態が元通りに回復されるならば発音障害もほぼ回復されるのですが、入れ歯が大型化するにつれて発音障害の度合いも大きくなります。
特に上顎の総入れ歯が原因の発音障害が多いようです。
それは、入れ歯が落ちてこないようにと口蓋を大きく覆うことによります。
カ行の発音は舌と口蓋とのスペースが近接に舌の動きを妨げられることが原因で起こることがあります。上顎の入れ歯の口蓋を金属にして薄く仕上げるか、もしくは無口蓋にすることで発音が改善されることがあります。
他にも上顎の入れ歯を装着してから、サ行が言いにくくなったと訴える患者さんがいます。この場合は前歯の裏側の人口の歯ぐきをS状の隆起の形態に修正することで改善できる場合もあります。
そのほかにも入れ歯の歯並びが不適切だったり、入れ歯の歯ぐきの厚みや長さ、噛み合わせの高さによっても舌の動きが阻害され、発音障害の原因になることがあります。
新しい入れ歯での発音障害を訴えられる場合は、経時的に減少する傾向があります。
これは舌の調音運動が入れ歯の形態に適応するためで、6日目ごろから患者さんの発音障害は軽減すると言われています。しばらくは適応期間として使って頂き、経過観察したほうがよいでしょう。
2015-07-31