全身疾患と歯周病の関係

歯磨きのたびに歯ぐきから血が出る、歯がグラグラしてきた、歯ぐきが痩せてきたなどの症状がある方は、歯周病の疑いがあります。歯周炎は実に全体の8割以上の成人がかかっている国民病です。歯周病は歯を失ってしまう原因のワースト1であるだけではなく、最近の研究では全身に様々な悪影響を及ぼしてしまうことが分かってきました。

今回は代表的な全身疾患である糖尿病と歯周病の関係についてご説明します。

糖尿病と歯周病は、共に、代表的な生活習慣病で、歯周病は糖尿病を悪化させることが近年の研究で明らかになってきました。

糖尿病の6大合併症の一つが、歯周病です。歯周病の2大危険因子は、糖尿病と喫煙です。このように両者は密接な関係にあります。その為、慢性炎症としての歯周炎をコントロールすることで、糖尿病の状態のコントロールを改善することが期待できます。

糖尿病の人は、歯周病になりやすい。
細菌は大きく分けて2種類あります。酸素がないと生きられない好気性菌と、酸素を嫌う嫌気性菌です。歯周病菌は、後者の嫌気性菌なのです。
歯周炎は、歯肉の境目のポケット(歯周ポケット)に入り込んで繁殖した嫌気性細菌の感染による慢性の炎症性疾患です。一方、糖尿病の方は、からだを守る免疫細胞の機能低下、血管壁の変化や脆弱化(細小血管障害)、創傷治癒の遅延などが起こり、歯周病の発症・進行に影響を与えます。その結果、糖尿病がコントロールされていないと、歯周病菌がより感染しやすくなり、酸素のない歯グキの奥のほうへ奥のほうへと入っていき、炎症の悪化により骨を含む歯周組織が急激に破壊され、歯周病が重症化していきます。

歯周病が及ぼす糖尿病への影響
歯周病関連細菌からだされる内毒素が、腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α, TNF-α)の産生を促進します。その結果、TNF-αの亢進が、血糖値を下げる働きをもつホルモンであるインスリンをつくりにくくする(インスリン抵抗性)ことがわかっています。すなわち、慢性炎症としての歯周炎の存在により、血糖値は上昇し、糖尿病のコントロールをますます困難にし、同時に、歯周炎も進行していくという悪循環に陥ります。糖尿病に関する記述

歯周病治療による糖尿病への影響

慢性炎症としての歯周炎に対する適切な治療により、重症度の指標である血中HbA1c濃度が0.5~1%低下するという報告も明らかになってきました。歯周病治療によって、歯周炎に起因するTNF-α産生量が低下するため、インスリン抵抗性が改善し血糖コントロールが好転すると考えられています。したがって、糖尿病患者で歯周炎を伴っている場合は、早期に、歯周炎の改善を図ることを考慮すべきでしょう。

歯科領域以外の専門用語も出ましたので、参考までに、糖尿病に関する基本情報を記載させていただきます。(厚生労働省ホームページより引用)

糖尿病ってどんな病気?(厚生労働省ホームページより引用)

はじめに、血糖について説明しないとね。食べものや飲みものを消化して作られる、ブドウ糖というものを知っているかい?
ブドウ糖?
それ、なあに?
からだを動かすエネルギー源となるものだよ。血液の流れに乗ってからだの細胞に運ばれて、筋肉や臓器で使われるんだ。血糖値というのは、血液中にそのブドウ糖がどのくらいあるかを示すものだね。
それがどう糖尿病と関係あるんだ?
糖尿病になると、ブドウ糖がエネルギーを必要としている細胞の中に運ばれなくなって、血液のなかにあふれてしまうんだ。
どうして?
インスリンというホルモンが足りなくなったり、うまく細胞に作用しなくなってしまうからだよ。

インスリンってなんだ?
インスリンは、からだの中で唯一血糖を下げるホルモンで、食後に血糖が上がらないように、調節するはたらきがあるんだ。それに、血液中のブドウ糖をからだの細胞に送り込んで、活動エネルギーに変えたり、脂肪やグリコーゲンというものに変えて、エネルギーとしてたくわえておくようにするはたらきもあるよ。
ブドウ糖のコントロールをしているってことか?
そう。だから、インスリンが不足したりうまく作用しないと、ブドウ糖が細胞に取り込まれなくなって、血液中のブドウ糖が使えなくなってしまうんだ。
それで血糖が上がっちゃうんだね。
そう。そうなると、筋肉や内臓にエネルギーが運ばれないから、全身のエネルギーが足りなくなってしまうんだよ。

糖尿病には、実はいくつかのタイプがあるんだ。1型糖尿病、2型糖尿病、遺伝子異常や、ほかの病気や薬剤の作用によるもの、それに妊娠糖尿病だね。

トラおじちゃんはどれなの?
きちんと調べないとハッキリしないけど、おそらくインスリンの働きが悪くなる2型糖尿病だろう。このタイプの原因は、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が大きいんだよ。
生活習慣って、食事とか?
そうそう、運動とかね。お酒の飲み過ぎなんかも、原因になるんだよ。

くわしくは厚生労働省のホームページをご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/tounyou/about.html